其後《そのご》何處《いづこ》に

あゝ、大佐《たいさ》は其後《そのご》何處《いづこ》に如何《どう》して居《を》るだらうと考《かんが》へるとまた種々《さま/″\》の想像《さうざう》も沸《わ》いて來《く》る。`此時《このとき》第《だい》二|點鐘《てんしよう》カン、カンと鳴《な》る。([#ここから割り注]船中の號鐘は一點鐘より八點鐘まで四時間交代なり[#ここで割り注終わり])`『おや、とう/\一|時《じ》になつた。』と私《わたくし》は欠伸《あくび》した。何時《いつ》まで考《かんが》へて居《を》つたとて際限《さいげん》のない事《こと》、且《か》つは此樣《こんな》に夜《よ》を更《ふ》かすのは衞生上《ゑいせいじやう》にも極《きわ》めて愼《つゝし》む可《べ》き事《こと》と思《おも》つたので私《わたくし》は現《げん》に想像《さうぞう》の材料《ざいりよう》となつて居《を》る古新聞《ふるしんぶん》をば押丸《おしまろ》めて部室《へや》の片隅《かたすみ》へ押遣《おしや》り、強《し》いて寢臺《ねだい》に横《よこたは》つた。初《はじめ》の間《あひだ》は矢張《やはり》頭《あたま》が妙《めう》で、先刻《せんこく》と同《おな》じ樣《やう》にいろ/\の妄想《まうざう》が消《け》しても消《け》しても胸《むね》に浮《うか》んで來《き》て、魔《ま》の日《ひ》魔《ま》の刻《こく》――亞尼《アンニー》の顏《かほ》――微塵《みじん》に碎《くだ》けた白色檣燈《はくしよくしようとう》――怪《あやし》の船《ふね》――双眼鏡《さうがんきやう》などが更《かは》る/\夢《ゆめ》まぼろしと腦中《のうちゆう》にちらついて[#「ちらついて」に傍点]來《き》たが、何時《いつ》か晝間《ひる》の疲勞《つかれ》に二|時《じ》の號鐘《がうしよう》を聽《き》かぬ内《うち》に有耶無耶《うやむや》の夢《ゆめ》に落《お》ちた。`    第五回 「ピアノ」と拳鬪《けんとう》`[#ここから5字下げ]`船中の音樂會――鵞鳥聲の婦人――春枝夫人の名譽――甲板の競走――相撲

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