頭《かうべ》を左方《さはう》に

極《きは》めて微《かす》かに――實《じつ》に審《いぶ》かしきまで微《かすか》ではあるが、たしかに砲《ほう》又《また》は爆裂《ばくれつ》發火《はつくは》信號《しんがう》の響《ひゞき》※[#感嘆符三つ、75-1]`私《わたくし》はふい[#「ふい」に傍点]と頭《かうべ》を左方《さはう》に廻《めぐ》らしたが、忽《たちま》ち『キヤツ』と叫《さけ》んで再《ふたゝ》び甲板《かんぱん》に跳出《をどりで》た。今迄《いまゝで》は少《すこ》しも心付《こゝろづ》かなかつたが、唯《たゞ》見《み》る、我《わが》弦月丸《げんげつまる》の左舷船尾《さげんせんび》の方向《はうかう》二三|海里《かいり》距《へだゝ》つた海上《かいじやう》に當《あた》つて、また一|度《ど》微《かすか》な砲聲《ほうせい》の響《ひゞき》と共《とも》に、タール桶《おけ》、油樽等《あぶらだるとう》を燃燒《もや》すにやあらん、※[#「火+稲のつくり」、第4水準2-79-87]々《えん/\》たる猛火《まうくわ》海《うみ》を照《てら》して、同時《どうじ》に星火《せいくわ》を發《はつ》する榴彈《りうだん》二|發《はつ》三|發《ぱつ》空《くう》に飛《と》び、つゞいて流星《りうせい》の如《ごと》き火箭《くわせん》は一|次《じ》一|發《ぱつ》右方《うはう》左方《さはう》に流《なが》れた。`私《わたくし》は實《じつ》に驚愕《おどろ》いたよ。此邊《このへん》は印度洋《インドやう》の眞中《たゞなか》で、眼界《がんかい》の達《たつ》する限《かぎ》り島嶼《たうしよ》などのあらう筈《はづ》はない、まして約《やく》一|分《ぷん》の間隙《かんげき》をもつて發射《はつしや》する火箭《くわぜん》及《およ》び星火榴彈《せいくわりうだん》は危急存亡《きゝふそんぼう》を告《つ》ぐる難破船《なんぱせん》の夜間信號《やかんしんがう》※[#感嘆符三つ、75-11]`『やア、大變《たいへん》だ/\。』と叫《さけ》びつゝ

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