顏を洗ひ乍らも幾度も幾度も自分はハガキを懷から出して眺めた。妻や小供にも少し關つてやらうと思ひ乍らハガキに氣をとられつゝ自分はNの『哀れな少女』の初めの一頁を息を殺して讀んだ。然うしてあとを樂しみにして幾度も自分を待つて呼んでゐる食事にいそいだ。ハガキと原稿は自分の懷と袂に本能的にしまは...

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葉書

[#2字下げ]葉書[#「葉書」は中見出し]

今日はいゝ日だ。朝、床の中でうと/\して居ると郵便配達がどつしりと重みの有る一束の葉書と手紙を投げ込んで行く音に目を覺された。自分は其處に五六枚のハガキが重さなり合つてちらばり、一通の手紙とを見た。自分は檻の中の獅子が投げ込まれた肉片に飛び...

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自分は見た

[#2字下げ]自分は見た[#「自分は見た」は中見出し]

自分は見た。朝の美くしい巣鴨通りの雜沓の中で都會から田舍へ歸る肥車が三四臺續いて靜かに音も無く列り過ぎるのを同じ姿勢、同じ歩調、同じ間隔をもつて同じ方向に同じ目的に急ぐのを自分がぴつたり立止つてその過ぎ行くのを見た時同じ姿勢で、...

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