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小説「失踪」の一篇

 わたくしはこの夏のはじめに稿を起した小説「失踪」の一篇を今日《こんにち》に至るまでまだ書き上げずにいるのである。今夜お雪が「三月《みつき》になるわねえ。」と言ったことから思合せると、起稿の日はそれよりも猶以前であった。草稿の末節は種田順平が貸間の暑さに或夜同宿の女給すみ子を連れ、白髯橋の上で涼みな...

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お雪の履歴

 わたくしの胸底《むなそこ》には先刻お雪が半《なかば》冗談らしく感情の一端をほのめかした時、わたくしの覚えた不安がまだ消え去らずにいるらしい……わたくしはお雪の履歴については殆ど知るところがない。どこやらで芸者をしていたと言っているが、長唄も清元も知らないらしいので、それも確かだとは思えない。最初の...

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穿き馴れぬ古下駄

 わたくしは素足に穿き馴れぬ古下駄を突掛《つッか》けているので、物に躓《つまず》いたり、人に足を踏まれたりして、怪我をしないように気をつけながら、人ごみの中を歩いて向側の路地の突当りにある稲荷に参詣《さんけい》した。ここにも夜店がつづき、祠《ほこら》の横手の稍《やや》広い空地は、植木屋が一面に並べた...

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