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ほんとの年はわからない

「お父さん。六十なの。まだ御丈夫。」 お雪はしげしげとわたくしの顔を見て、「あなた。まだ四十にゃならないね。三十七か八かしら。」「おれはお妾《めかけ》さんに出来た子だから、ほんとの年はわからない。」「四十にしても若いね。髪の毛なんぞそうは思えないわ。」「明治三十一年|生《うまれ》だね。四十だ...

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窓口に坐っている女の顔

 上って来たお雪はすぐ窓のある三畳の方へ行って、染模様の剥《は》げたカーテンを片寄せ、「此方《こっち》へおいでよ。いい風だ。アラまた光ってる。」「さっきより幾らか涼しくなったな、成程いい風だ。」 窓のすぐ下は日蔽《ひおい》の葭簀《よしず》に遮《さえぎ》られているが、溝の向側に並んだ家の二階と、窓...

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遠廻しに土地の事情を聞出そうと思った時

「そうですか。ここはもともと埋地で、碌《ろく》に地揚《じあげ》もしないんだから。」と主人もしぶしぶ口をきき初めた。「それでも道がよくなりましたね。第一便利になりましたね。」「その代り、何かにつけて規則がやかましくなった。」「そう。二三年前にゃ、通ると帽子なんぞ持って行ったものですね。」「あれ...

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