検査場《けんさば》のすぐ手前

「検査場《けんさば》のすぐ手前よ。」「それじゃ公設市場の方だろう。」「あなた。方々歩くと見えて、よく知ってるんだねえ。浮気者。」「痛い。そう邪慳《じゃけん》にするもんじゃない。出世前の身体《からだ》だよ。」「じゃ頼むわよ。あんまり待たせるようだったら帰って来るわ。」「お前待ち待ち蚊帳の外…...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 03:43 pm  

お雪が住む家の茶の間

[#ここから2字下げ]そのあたり片づけて吊る蚊帳《かちょう》哉《かな》さらぬだに暑くるしきを木綿蚊帳《もめんがや》家中《いえじゅう》は秋の西日や溝《どぶ》のふちわび住みや団扇《うちわ》も折れて秋暑し蚊帳の穴むすびむすびて九月哉屑籠《くづかご》の中からも出て鳴く蚊かな残る蚊をかぞへる壁や...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 03:42 pm  

わたくしがふと心易くなった溝際の家

 わたくしがふと心易くなった溝際の家……お雪という女の住む家が、この土地では大正開拓期の盛時を想起《おもいおこ》させる一隅に在ったのも、わたくしの如き時運に取り残された身には、何やら深い因縁があったように思われる。其家は大正道路から唯《と》ある路地に入り、汚れた幟《のぼり》の立っている伏見稲荷の前を...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 03:41 pm  

T: Y: ALL: Online:
Created in 0.0134 sec.

http://aiko-aoyama.jp/