今年の夏

 今年の夏も、昨年また一昨年と同じように、毎日まだ日の没しない中《うち》から家を出るが、実は行くべきところ、歩むべきところが無い。神代帚葉翁《こうじろそうようおう》が生きていた頃には毎夜欠かさぬ銀座の夜涼みも、一夜《いちや》ごとに興味の加《くわわ》るほどであったのが、其人も既に世を去り、街頭の夜色に...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 03:38 pm  

わたし父の商売

「さア、やっぱり都会のあこがれだと思うんだが、そうじゃないのか。」「それも無論そうだけれど、それよりか、わたし父の商売が、とてもいやだったの。」「何だね。」「親分とか侠客《きょうかく》とかいうんでしょう。とにかく暴力団……。」とすみ子は声を低くした。

[#8字下げ]五[#「五」は中見出し]...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 03:38 pm  

乱暴でも何でもかまわない

「わたし。此処《ここ》に寝るわ。お隣りの君ちゃんのとこへ行ってもいいのよ。彼氏が来ていなければ。」「あんたの処《とこ》は誰も来ないのか。」「ええ。今のところ。だから構わないのよ。だけれど、先生を誘惑してもわるいでしょう。」 種田は笑いたいような、情ないような一種妙な顔をしたまま何とも言わない。...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 03:37 pm  

T: Y: ALL: Online:
Created in 0.0121 sec.

http://aiko-aoyama.jp/