窓口に坐っている女の顔

 上って来たお雪はすぐ窓のある三畳の方へ行って、染模様の剥《は》げたカーテンを片寄せ、「此方《こっち》へおいでよ。いい風だ。アラまた光ってる。」「さっきより幾らか涼しくなったな、成程いい風だ。」 窓のすぐ下は日蔽《ひおい》の葭簀《よしず》に遮《さえぎ》られているが、溝の向側に並んだ家の二階と、窓...

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遠廻しに土地の事情を聞出そうと思った時

「そうですか。ここはもともと埋地で、碌《ろく》に地揚《じあげ》もしないんだから。」と主人もしぶしぶ口をきき初めた。「それでも道がよくなりましたね。第一便利になりましたね。」「その代り、何かにつけて規則がやかましくなった。」「そう。二三年前にゃ、通ると帽子なんぞ持って行ったものですね。」「あれ...

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手には風呂敷に包んだものを持っている

 わたくしは大方馴染の客であろうと思い、出ようか出まいかと、様子を窺《うかが》っていると、外の男は窓口から手を差入れ、猿をはずして扉《と》をあけて内《なか》へ入った。白っぽい浴衣《ゆかた》に兵児《へこ》帯をしめ、田舎臭い円顔に口髯《くちひげ》を生《はや》した年は五十ばかり。手には風呂敷に包んだものを...

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